おまえもジョン・スミスか!

英語圏で一番多い男性の名前はJohn Smith(ジョン・スミス)だとはよく知られている事実である。
日本で言えばさしずめ「鈴木一郎」か。


Smithとはもちろん「鍛冶屋」のことで、よくある職業姓のひとつだ。
職業姓には他にも、Tailer(テイラー)「仕立て屋」、Carpenter(カーペンター)「大工」、Baker(ベイカー)「パン屋」...等いろいろある。


さて、Smithであるが、農業でも牧畜でも鉄の道具が必需品になった頃には既に職業として分化していたはずで、それ故古い姓だと考えられる。
英語圏以外のヨーロッパにも、同じように「鍛冶屋」を意味する姓がある。

アルファベット表記 発音
イギリス Smith/Smither/Smyth スミス/スマイサー/スマイス
ドイツ/オランダ Schmidt/Schmitt/Schmitz シュミット/シュミット/シュミッツ
スウェーデン Smed スメド
ノルウェー Smid スミド
アイスランド Smictr スミクトル
フランス Lefevre/Ferrier/Ferron ルフェーブル/フェリール/フェロン
イタリア Ferraro フェラーロ
ポルトガル Ferreiro フェレイロ
スペイン Herrera エレーラ
ハンガリー Kovacs コヴァーチ
ポーランド Kowalski コヴァルスキ
ロシア Kovalski/Kuznetzov コヴァルスキィ/クズネツォフ

自動車のフェラーリFerrariはFerraroから派生した姓なので、やはり「鍛冶屋」だ。
ロマンス語系では「Fer-」で始まり、ゲルマン語系は「S(ch)m-」で始まっている。
スラブ語では「Kow(v)-」で始まっている。


ちなみに、ジョン(John)は言うまでもなく、洗礼者ヨハネの英語読みである。これも男性の名前としてはありふれている。
各国語の対応は次のとおり。

アルファベット表記 発音
イギリス John ジョン
ドイツ Johan/Hans ヨハン/ハンス
フランス Jean ジャン
イタリア Giovanni ジョバンニ
スペイン Juan フアン
ハンガリー Janos ヤーノシュ
ポーランド Jan ヤン
ロシア Ivan イワン


ドイツの「ハンス・シュミット」もフランスの「ジャン・ルフェーブル」もイタリアの「ジョバンニ・フェラーロ」もハンガリーの「コヴァーチ・ヤーノシュ」(マジャール語では姓名の順になる)もポーランドの「ヤン・コヴァルスキ」もロシアの「イワン・クズネツォフ」も、
全部「ジョン・スミス」と同じ意味になる。


また、ヨーロッパからアメリカへ移民した人で自分の名前を英語風に変えた例は多い。
「ヤン・コヴァルスキ」さんや「ハンス・シュミット」さんは、アメリカ人になるために「ジョン・スミス」と改名したのだった。


このように、「よくある名」×「よくある姓」×「英語化」の相乗効果によって、
John Smith(ジョン・スミス)は英語圏で一番多い男性の名前になったのだった。

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